陰謀は蜜の味
陰謀論の罠 The Trap of Conspiracy Theories (光文社ペーパーバックス)
- 作者: 奥菜秀次
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/04/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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買った。新宿の紀伊国屋で。
911陰謀論に対する反論本ではあるけど、後半は陰謀論全般を扱って、なぜ陰謀論が起こるのかということを考察してるっぽい。まだ全部読んでないから分からんけど。あと、「異objectionを唱えた」みたいな、ほとんど無意味な日本語と英語の併記がいたるところにあって読みにくい。これだけはやめてほしかったけど、amazonのユーザー書評を読んでいい方法を思いついた。読む時にルー大柴の声で再生すると面白い。
911陰謀論に対する反証は、ネットで見たようなこと以外は特に書かれてなかったな。
ま、それ以外に反論しようがないか。
おもしろかったのが、陰謀論が論拠とする各種元ネタになってる大衆新聞ってのがあるそうで、その出版社はホロコースト陰謀論を唱える出版社と繋がってるという話。つまりガチガチの反ユダヤ。たとえば、911の前にWTCにあるユダヤ系企業にひそかに退去命令が出てて、当日ユダヤ人がWTCにはいなかったってデマもここが出所らしい。
ホロコーストがなかったなんて与太話を触れまわってる人たちが、911陰謀論の火元なんすヨ!!
信者のみなさん、そんなんで、いいンすか?
反ユダヤ新聞→「ボーイングを探せ」「ルース・チェンジ」→本なども出版され世界中に広まる、といった、いわば情報のロンダリングが行われてるんだね。たぶん、いま911がアメリカの陰謀だったって広めてるひとたちは単純に正義感からやってるんだと思う。火元がガチガチの反ユダヤってことも知らずにね。
いや、しかし改めて思ったのが陰謀論の、その悪魔的な魅力。
たとえばさ、ケネディの暗殺のことを、たいていの人は陰謀だと思ってるよね。JFKって映画あったしね。ぼくもそう思ってた。上の「陰謀論の罠」では特に触れられてないけど、なんとなく疑うべきような気がしてきた。
で、かるくググるとすぐ出てくる
いちばん有名なのが、オズワルドが狙撃したとすると、ありえない弾道になるって「魔法の弾丸」の話だけど
http://www11.atwiki.jp/voodoo65/pages/22.html
あっさり反論されててワロタww
ま、これでわかるのはオズワルド単独犯でいいんじゃないの?ってことだけで、ほかにいろいろあるかもしれないけどね。
でも、ケネディ大統領暗殺が陰謀だったって言ってる人たちが大きな証拠としてあげてる「魔法の弾丸」が、この程度のことで反証されるとなぁ・・・。
だいたい、よく考えれば謀殺が目的だったらあんな衆人環視のなかでやらないほうが、確実だし変に疑われないし絶対いいよ。もし、ぼくがやるんだったら、人目のつかないところでやるよ。
ケネディ大統領暗殺陰謀説は、911陰謀論とおんなじで、細部は細かいけど、全体を俯瞰するとちぐはぐなものだった。
でも、信じる人は多い。
これはさ、やっぱり政府の陰謀だった!って考えるのは、巨悪を暴くみたいで、気持ちいいんだよね。それになんとなく知的な雰囲気が漂う。これはたいへん魅力的ですよ。ひとの正義感と知的欲求を満たしてくれるからねー。
だから、陰謀論に騙されるのは仕方ないよ。
問題はそのあとでさ。
自分が信じていたものが間違ってるってことを認めるのは、これは逆にかなり不快なことなんだよね。
だから、1度信じたものは、けっこう意固地になって信じ続けようとするんだ。
「陰謀論の罠」のアマゾンのユーザー評を見てもらえばわかるんだけど、陰謀ビリーバーはクソミソにこの本をこき下ろしてるんだよね。
これはさ、反証の説得力とかそういったところを通り越して、単に自分の信じたものの間違いを認めたくないってことじゃないのかなぁ。
間違いを認める勇気。これは大切だと思うなぁ。